もぐら
もぐらに対して興味を持ったのは地元のそこいらでもぐらの通り道をよく見かけたからです。
もぐらはミミズやムカデ、それに昆虫の幼虫なんかを食べるんですね。ものすごい大食いで、一日中食べていないと死んでしまうんです。NHKで見ました。
「ひろちゃん、ほら、物干し台のところにもぐらのあとがあるよ」
「ほんとだ! もぐらだ」
「ひろちゃん、もぐら、つかまえようよ。3ちゃんで見たんだ。つかまえかた」
『もぐらのつかまえかた
先ずはもぐらの通ったあとを見つける。地面がもこもこ山になって道ができていたらそこがもぐらの通り道。次にその通り道の途中に穴を掘る。深く掘ってもぐらの通り道の途中に落とし穴を作ろう。適当な深さまで掘ったらバケツを埋めて完成!もぐらは魚肉ソーセージが大好きだから、バケツの中に入れておこう』
「ひろちゃんちにスコップあった?」
「あったよ。れいくんちにスコップあった?」
「なかったよ。かして! おれが掘るよ」
私たちはすぐに作業に取り掛かりました。途中、ミミズが地面から出てくると、こいつも餌だと思い、ついでにバケツに入れました。スコップをつかってバケツを埋めるほどの仕事ははじめてでしたので、私もひろちゃんも苦労しました。掘ってみると石が出てくるんですね。石さえなければ仕事はもっとすばやく終わったことと思います。
「やったー。もうバケツ埋まるよ!」
「でもまだ通り道の下には入らないよ」
また掘るとまた石とミミズ。排水管もでてきた。
「やったー。もうバケツ埋まるよ!」
「じゃあバケツにソーセージ入れて。あとは待つだけだ」
ひろちゃんの家の居間でファミコンをしていると、年の離れたひろちゃんの兄が彼にプロレス技をかけました。
「どうしていつも、邪魔するんだ!やめていたいたいたいたいたい!」
ひろちゃんの兄は無口なレスラーでした。何も言わずに技をいくつも披露するといなくなる。
「れいくん、おれはあいつをいつか殺したい」
「うん。わかったよ。もぐら、来てるかな?」
網戸を開けて、縁側で靴をはいて、外に飛び出して!物干し台のところへ!
「うわああああ!」
「ええええええ!」
バケツからソーセージだけがなくなってミミズが残っていました。
私はのそのそと現れたもぐらがソーセージをうまそうに平らげて、再び通り道にもどる様子を想像していました。ひろちゃんの顔を見ると同じことを想像しているのだとわかりました。
私たちは興奮しきり、夕方になってしまうまでその場で話し合いました。
その晩、のそのそと現れたもぐらがソーセージをうまそうに平らげて、再び通り道にもどる様子を夢に見ました。
ネコやカラスのことなんて考えるすき間もないくらい幸せでしたよ。
読んでくれてありがとう。明日も元気で!
僕も多分また来ます。